
中国体彩网で「広域連携型LICシンポジウム」を開催
2026年6月19日(金)17:00より、中国体彩网病院 教育研究棟3階 大教室にて、「新潟での成長物語 ~臨床研修を超える臨床実習がここにある。」と題した広域連携型LICシンポジウムが開催されました。当日は、本学学生?教職員を含め、新潟県庁、沖縄県立中部病院をはじめ10大学、21病院の参加があり、来場者?オンライン参加者をあわせて100名を超える参加がありました。

新潟県の協力で、長期滞在型臨床実習(LIC)を日本の私立大学で初めて導入
LIC(エルアイシー)とは、Longitudinal Integrated Clerkshipの略で、米国やオーストラリアを中心に世界的な広がりを見せている長期滞在型臨床実習のことで、本学では12週間(3ヶ月間)、新潟県の中小規模の病院で、主に総合診療科?総合内科に属し実習を行っています。そのため、すべての診療科の患者さんを総合的に診療し、また急性期から外来通院する慢性期まで一人の患者さんを追っていくことが可能です。こうした経験を通じて、診療だけでなく患者さんの生活にも目を向け、総合的に医療をとらえる力を養います。中小規模の病院では、処方以外ほぼ臨床研修医と同様の診療を行うことが可能で、本学では、日本の私立大学として初めて2025年度に第6学年の臨床実習にLICを導入しました。これは同年4月に「医師育成に関する連携協定」を締結した新潟県の協力を得て実施できたものであり、今年度は2026年2~4月に9名の学生がLICに参加しました。
3ヶ月で「医学生が経験すべき手技?医療行為126項目」の9割以上を経験
「LICはみんなで作りあげてきたもの。実習に行って帰ってきた学生のみなさんの顔の輝きを見て、今日の発表もとても楽しみ」という林由起子理事長の和やかな開会挨拶で始まり、まずはLICの特徴について、当日司会進行を務めた参加学生の白築美結さん、髙橋慶悟さんより概要紹介がなされました。
特に、東京医大のLICの特徴として、「広域連携型」「診療科横断型」「学生の自主性主導型」の実習であったことがあげられました。
「広域連携型」とは大学と医療機関、自治体が立地や領域の垣根を超えて幅広く連携し、学生が地域の医療機関に長期間滞在して実践的な地域医療を学ぶ方法で、日本では初めての試みです。
学生自ら、指導医や研修医、看護師、検査技師、事務職員に学びたいことを伝え、診療に参加していく中で、「医学生が経験すべき手技?医療行為126項目」のうち参加した全ての学生が90%以上を経験することができたとの発表がありました。また、診療科横断型であるため、外来?ERから病棟、さらには病院外の医療現場まで、まさに地域に根差した医療を体験し、実習の3ヶ月目にはどの病院でも、「共に医療に向き合うチームの一員」となっていたようです。
様々な院外実習で「暮らしとともにある」地域医療の役割を体感(実習先:魚沼市立小出病院)
魚沼市立小出病院で実習した桝田康太さんは、「なりきり主治医」として病棟実習を体験。さらにそれに留まらず、介護福祉や訪問診療といった院外研修にも積極的に参加し、高齢化率40%を超える魚沼地域では地域全体で医療を提供していることを学べたといいます。特に院外実習で行った上村医院では、豪雪地帯での地域住民の健康増進のため、総合型地域スポーツクラブを設立するなど、医療機関が医療の枠を超えて、地域住民の生活の場につながっていることを体感。実習を通して総合診療に大きな関心を抱き、「将来は魚沼の医療に貢献し、恩返ししたい。魚沼はメディカルホームタウン」と語るほどでした。また、自らの学びを実習先で開催された医療従事者や地域住民向けの健康講座「地域医療魚沼学校」でも発表しています。
離島医療で得た「毎日ベッドサイドに足を運ぶ意味」
(実習先:佐渡総合病院)
離島にある佐渡総合病院で実習した田中大芽さんは、病棟で「1人の医師」として、毎日ベッドサイドでの診察やカルテ記載、検査計画の策定、退院調整など、指導医と綿密に相談しながら診療に参加。毎日足を運ぶことで、患者さんが何かあった時に医師に話してくれる関係性ができたことを体感。「毎日観察することで、バイタルや数値だけでは測れないその日、その瞬間の患者さんの全身状態がわかるようになった。」といいます。「指導医との信頼関係も継続的な実習を行うLICだからこそ作れた」という言葉も印象的でした。
専門に関わらず、全身を診られる医師になりたい
(実習先:柏崎総合医療センター)
柏崎総合医療センターで実習した村松里香さんは、LICに参加したことで、地域医療ならではの課題と医師としての役割を目の当たりにし、「1人の医師が責任を持って患者さんを診る、医師としてのかっこよさ」を熱く語りました。医療資源?人材が不足している地域では分業が難しく、専門外の領域でも医師が介入する必要があります。医師が、外来においても病棟においても、専門外でも「総合内科」として患者さんを診たり、必要に応じてポータブルエコーを活用してその場で判断したりしている姿を間近で見て、「専門医でありながら、横断的に患者を最初から最後まで診られる医師」、「専門外でもよどみなく対応できる医師」という理想の医師像を持てたといいます。
LICは"主治医感"が育ち、将来の医師像にまでインパクトを与える濃密な実習
プレゼンを聞いた先生方からのフィードバックでは、離島?地域医療を支える北米式の臨床研修教育で著名な沖縄県立中部病院の尾原晴雄先生から、「皆さんの発表を聞いて、その成長物語にゾクゾクした。3ヶ月間のLICは"主治医感"が育ち、将来の医師像にまでインパクトを与える濃密な実習。目の前のどんな患者さんからも逃げずに自分が対応する、そういった力を持つこれからの医療人が育つ取り組みだと感じた」と本学のLICの成果を総括するようなお言葉をいただきました。

「3ヶ月」という長さが、現場での信頼関係を構築し、学生の「自主性」を育む
その後、今回本学でLIC導入を推進した三苫博副学長(教学マネジメント担当)が進行役となり、参加学生9名全員がパネルディスカッションに参加。学生の話から「3ヶ月」という期間が、現場での信頼関係を築いた上で主体性を持って行動するのに必要な期間であることがわかってきました。実際に、「3ヶ月あったから、アドバイスを取り入れて実践でき、院外にも実習の幅を広げることができた」という声も。
実習先の病院からも「3ヶ月は学生も病院側もお互いを知るのに十分な長さで、最後には学生ではなく一人のスタッフとして見るようになっていて、つい『薬出しといて』と指示してしまうほどだった」というお話も飛び出し、LICでの学生の成長がうかがえました。さらに、「この実習では学生が自分で課題を見つけて取り組めるため、地域医療のリーダー育成にも寄与するのでは」という示唆もありました。実際に、本学の学生が、同時期に他大学から実習に来ていた学生にもいい影響を与えていたとのお話もあり、LICの成果を感じることができました。

「自分が必要とされている」体験が、学生の価値観?人生を変える
学生の話を聞いていくと、元々卒後は首都圏の病院での臨床研修を考えていたが、LIC参加後は、地域医療の課題を知り、地域医療に貢献したいという想いに至った学生の多さにLICの魅力が可視化されました。実際に新潟県に行ってみて「自分が必要とされている」という実感を得て、新潟県のLIC実習先で臨床研修をすると決断した学生も。
「いきなり地方で2年間の臨床研修はハードルが高いが、臨床研修前に3ヶ月行けるというのは大きい」との話もあり、卒後の臨床研修を控えた学生としてのLICのメリットも可視化されました。

南魚沼にサテライトオフィスを設置
さらに、三苫副学長より新潟でのLIC実施における学生支援の充実のためこの夏、南魚沼にサテライトオフィスを設置し、さらなるLICの拡充に向けコンソーシアム構想を立ち上げた旨について説明がありました。
本学では、他大学も活用可能な「LIC共有プラットフォーム」を構築し、行政、地域病院群、そして本学を含む複数の大学群が参画するコンソーシアムを設立し、全国の大学がLICを安定的に実施できる教育基盤の提供を目指します。また、単なる診療参加体験に留まらず、質の高い「地域医療のための総合的な診療能力」の修得を明確な到達目標としており、その実現に向け、長年、米国式で離島医療を支える総合的診療能力を習得する臨床研修を行ってきた沖縄県立中部病院(2026年2月包括連携協定締結)の教育ノウハウを導入します。

コンソーシアム構想の説明を受け、サテライトオフィスが設置される南魚沼市民病院の外山千也病院長からも「この取り組みが日本全体の医療を変えるきっかけになってほしい。国を巻き込んで大きく育っていってほしい」と力強いお言葉をいただきました

日本のLICの第一人者である富山大学の高村昭輝先生からも「日本にLICを導入したいと思ってから16年、今のこの追い風は嬉しい。全て地域の病院のご協力のおかげ。学生や研修医は長期間いてくれたら、能力を発揮できる。LICを地域医療に入れていけば、医師不足解消につながるのでは」とのお話がありました。また、今年7月に富山県で行われる日本医学教育学会では米国やオーストラリアでのLIC実施に関する最新の発表があるので、是非参加してもらえたらとの紹介もありました。

地域が医学生に向けてできること
また今回新潟県でのLIC実施にあたり、県内の実習先病院の調整にご尽力いただいた新潟県の行政医である神田健史先生からも「今後さらに仲介役として受け入れ病院を増やしていかないといけない。地域の病院からは学生の教育なんてできないと言われるが、教育とは知識を教えることだけでなく、学生に"自分が必要とされている"というメッセージを出していくことも大切だ」というお話があり、今後の実習受入れ病院の確保に向け、重要な示唆となりました。

また新潟大学の岡崎史子先生からも「体験が人を育てるのだということを強く感じた。より豊かな体験を医学生に積んでもらえるように、全国的な流れを今日お集まりの皆様方と作っていけたら」というお言葉もいただきました。

全員がLICを体験できるのが理想 その体制構築に向けたコンソーシアム構想
さらに今回本学が立ち上げた「広域連携型LICコンソーシアム構想」でアドバイザリーボードとして参画いただく先生方からも様々なご意見をいただきました。
秋田大学の長谷川仁志先生からは「医学教育のコアカリキュラムの7割はノンテクニカルスキル。このLICの3ヶ月で、それを身に付けることができたと学生が体感していることに感激した」といったお言葉がありました。

また国際医療福祉大学の赤津晴子先生からも「これだけ有意義な実習(LIC)に行けるのが10名程度ではもったいない。期間を検討するなど、ぜひ大半の学生が体験できる体制を構築できれば。LICに期待していない学生にこそLICを体験してもらい、価値を作れるかも課題。今後、LICが日本の医学教育の質を上げ、ひいては医療の質のさらなる向上につながれば」というお言葉をいただき、本取り組みの無限の可能性を感じ、今後に向け大きな弾みとなりました。

最後に、学生たちの熱い発表を聴いて感激し涙腺が緩んだという宮澤啓介学長からも「LICで『頼りにされたこと』そして何より『将来のロールモデルを持てたこと』が、学生にとってすばらしいこと。今後も『患者とともに歩む医療人を育てる』というミッションのもと、様々な分野で活躍できる医療人を育てていきたい」とのお言葉があり、盛況のうちに閉会となりました。
■シンポジウム参加者のご所属先一覧(全34施設)
- 大学(10施設)
中国体彩网、富山大学、新潟大学、秋田大学、国際医療福祉大学、久留米大学、 東北医科薬科大学、東邦大学、群馬大学、千葉大学
- 病院(21施設)
【令和8年度 新潟県内実習先】 南魚沼市民病院、佐渡市立両津病院、糸魚川総合病院、柏崎総合医療センター、 新潟県立十日町病院、佐渡総合病院、魚沼市立小出病院、村上総合病院
【その他の医療機関】 沖縄県立中部病院、町立津南病院、湯沢町保健医療センター、利根中央病院、坂総合病院、 南砺市民病院、岡田内科医院、平成横浜病院、東葛病院、天草地域医療センター、 安房地域医療センター、みさと健和病院、湘南藤沢徳洲会
- 行政 他(3施設)
新潟県、群馬県医師会、群馬県医師連盟
