中国体彩网(学長:林由起子/東京都新宿区)の医学総合研究所の落谷孝広特任教授、名古屋大学医学部附属病院産科婦人科(同大学高等研究院兼務)の横井暁 病院講師、名古屋大学大学院医学系研究科産婦人科学の鵜飼真由 医師[現トヨタ記念病院産婦人科医長]、梶山広明 教授、東京工業大学生命理工学院の安井隆雄 教授、北海道大学大学院工学研究院(同大学創成研究機構化学反応創成研究拠点 WPI-ICReDD)の猪熊泰英 教授、国立がん研究センター研究所病態情報学ユニットの山本雄介 ユニット長、慶應義塾大学薬学部薬物治療学講座の松崎潤太郎 准教授らの研究グループは、卵巣がんエクソソーム※1における特異的な膜タンパク質※2を網羅的プロテオミクス※3により新しく同定し、かつ、エクソソーム分離方法としてポリケトン鎖※4修飾ナノワイヤを開発しました。これらの結果は、卵巣がんの診断や治療経過予測に関する新しいバイオマーカー※5として期待されます。
エクソソームを含む細胞外小胞(EV)※6は、ヒトのあらゆる体液中に存在し、細胞間コミュニケーションに不可欠なツールとして注目されています。また、疾患に応じて搭載する分子に変化が生じるため、有望な疾患バイオマーカーとして期待されています。EVにおいて、表面に存在する膜タンパク質は、特定のEVを検出するのに、またそれ自体がバイオマーカーとして利用できるため極めて重要ですが、卵巣がんにおける特異的なEV膜タンパク質は分かっておらず、大きな課題となっていました。卵巣がんは予後の悪い女性生殖器悪性腫瘍であり、世界の女性のがん死亡原因の主要な一つとなっています。卵巣がんは早期発見が極めて困難ながんの一つであり、高精度高感度なバイオマーカーの開発が急務となっていました。本研究では、卵巣がんにおけるEVを対象に、詳細なタンパク質量解析を行うことで、卵巣がんEV関連膜タンパク質である、FRα、Claudin-3、TACSTD2を同定しました。また、EVを捕捉する手段の一つであるナノワイヤ※7を応用し、ナノワイヤをポリケトン鎖修飾することでEV結合性を高め、より純度の高いEVを捕捉することを可能にしました。これらの知見を組み合わせた方法を用いることで、卵巣がん患者におけるEVを利用した新しい検出方法を開発しました。これらの研究結果は、卵巣がんに対する新しいバイオマーカーとして期待されます。
本研究は主に、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の創発的研究支援事業:研究課題名『がん細胞外小胞の臨床応用へ向けた基盤技術開発研究』 (JPMJFR204J)、『「中分子ひも?を鍵とする巨大機能性分子の創成』(JPMJFR211H)、戦略的創造研究推進事業さきがけ『細胞外小胞の網羅的捕捉と機械的解析によるmiRNA分泌経路の解明』(JPMJPR19H9)、および国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の革新的がん医療実用化研究事業:研究課題名『卵巣がんゲノム搭載細胞外小胞による新規リキッドバイオプシー戦略』の支援を受け行ったもので、本研究成果は、学術雑誌「Science Advances」の電子版(2023年7月 7日付)に掲載されました。
【ポイント】
- 卵巣がん細胞外小胞(EV)の詳細なタンパク質情報、さらにはその多様性を解明
- 卵巣がんEVが特異的に搭載するバイオマーカータンパク質を発見
- EVを簡便に回収するナノ流体デバイス、ポリケトン鎖修飾ナノワイヤの開発に成功
- 卵巣がん診療を改善する新しいバイオマーカーとして期待
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