第32回中国体彩网医学教育アドバンストワークショップをオンラインで開催
2021年9月4日(土)13:00より「第32回中国体彩网医学教育アドバンストワークショップ」が開催されました。今回は、新型コロナウイルス感染症の拡大状況を鑑み、Zoomによるオンライン開催となり、学生を含む39名が参加しました。
理想とする医学校を創ろうとした学生たちの行動がきっかけで建学された中国体彩网で、100年以上経った今でも、そうした「自主自学」の精神が受け継がれていることを感じさせる取り組みを取材しました。(企画部広報?社会連携推進室)
学生が、教員のワークショップに初参加
この医学教育アドバンストワークショップは、医学教育推進センターが主催し、医学科のカリキュラムの開発や教育技法に関するテーマなどについて年1回開催しているもので、今回、初めて学生も参加し、教員と一体となって今後の医学教育について考える場となりました。
参加した学生はカリキュラム委員会学生部会のメンバーで、この学生部会には各学年から代表が2~3名出ており、課題によって様々な学生が参加しています。コロナ禍では特に学生の意見を十分吸い上げる必要があり、本学では昨年から定期的に学生部会から匿名で意見をメールで受け付け、そのすべてに回答する、という取り組みを続けています。
カリキュラム委員会学生部会はこれまでも有志で活動していましたが、2020年9月に正式に設置されました。本学では、これまでも学生の意見がカリキュラムに反映されています。例えば、「英語」と「医学英語」の連携、「臓器別ローテーション実習」における、医行為のシミュレーション、外来実習の導入などです。
今回のアドバンストワークショップへの学生参加に先立ち、7月21日に「中国体彩网はこれからも学生が創る」と題し、医学生が当事者として医学教育を話し合う「学生版アドバンストワークショップ」を開催し、14名の学生が参加しました。こうした積み重ねが学生の積極的な教育の取組みへの参加につながっています。
本学のオンライン授業を振り返り:教育DXによる柔軟で、多様な、主体的学びの実現に向けて
はじめに、林由起子学長から開会の挨拶ののち、医学教育学分野の三苫博主任教授より、講演1として本学のICT活用の状況について、「教育DXによる柔軟で、多様な、主体的学びの実現に向け、今後、対面授業にオンライン授業をどう組み込んでいくか、知識はオンデマンド教材で習得が可能な中、対面授業でどんな付加価値が必要か、一緒に考えていきたい」というお話がありました。
その後、講演2として医学教育学分野の原田芳巳准教授より、6?7月に学生?教員向けに実施したPostコロナ授業アンケートの結果について報告がなされ、学生が感じているオンライン授業でよかった点?悪かった点をはじめ、学生と教員のオンライン授業に対するとらえ方の違いなどを確認しました。
学生が活発な意見を提示、学生の要望を把握
続いてグループワーク1として、Zoomのブレイクアウトルーム機能により、4つのグループに分かれ、「本学のオンライン授業でできたこと、できなかったこと」と題して、ディスカッションを行いました。1年生の学生も参加していた一般教育の教員グループでは、学生からオンデマンド授業のメリットや、実際にオンラインで困ったこと、大学に対する要望などが積極的に話され、教員からもオンライン授業における学生の理解度把握の難しさなどが課題にあがりました。
その後、一旦全体のルームに戻り、カリキュラム委員会学生部会からの要望が発表され、学生から忌憚ない意見?要望が提示されました。そこで、授業における要望以外にも、学生生活について、学生間(同級生?上級生)?学生と教員とのつながりをいかに構築するかに課題があることが浮き彫りになりました。
他大学でのオンライン教育の実践状況を聞き、学ぶ
さらに、講演3として、慶應義塾大学医学部 医学教育統轄センターの門川俊明先生より、「慶應義塾大学でのCOVID-19パンデミックにおけるオンライン教育の実践」と題し、実際に慶應義塾大学でどのようにオンライン教育の体制を構築したのか、その中での試行錯誤の内容を具体的にお話いただきました。
「Postコロナの医学教育」を、学生と教員が一緒に考える
グループワーク2では、再びグループに分かれ、今回のワークショップの本題である「Postコロナの医学教育」について、ディスカッションを行いました。2年生も参加していた基礎医学の教員グループでは、昨年コロナ禍で初めてオンライン授業を経験した学生にとっては、部活や学生生活で縦横のつながりが作れないことで想像以上に精神的ストレスがあり、悩んでしまう学生がいたことを訴えていたことが印象的で、大学としてもつながりを構築する場を提供することが必要ではないかという議論が教員も交えて行われました。このグループには門川先生も参加しており、慶應での具体的な対策などを伺いながら、それらを参考に、本学で改善すべき点などを洗い出していました。
グループワークでは各グループが話し合ったことをとりまとめ、グループの代表が全体に向けて発表し、質疑応答によりさらに議論を深めました。全体発表の場でも学生から活発に発言があり、学生として困っていることや聞いてみたいことなどを積極的に伝えていました。
臨床の教員グループからは、(内科系)4大学間連携による他大学の授業動画の相互活用や、1コマの授業時間を減らしてオンデマンド教材で学習し、その分空いた時間を他に使うといったアイデアや、(外科系)病院実習における手術や手技のコンテンツのオンデマンド化や、課外活動?学生生活による人間力の滋養のため、オンライン課外活動の推奨など、様々な意見が出ていました。
対面での実習の機会が減っている中で「医師としての自覚をいかに形成するか」が課題
質疑応答の最後に学生から、「行動規制があり、医療現場になかなか触れられない中、どのように医師?社会人としての自覚は育まれるのか」という問いがあがり、様々な教員から回答がなされました。オンライン教育による効率的な学修の先にある「プロフェッショナリズムの醸成」をどのようにしていけばよいか、大学側が改めて考える貴重な機会となりました。
閉会の挨拶でも、三苫主任教授より「いろんな気づきがあった。今は変わらなければいけない時代。対面実習も従来通りのやり方では難しい。色々と模索しながら、よりよいものを作っていきたい。」との言葉があり、盛会のうちに終了しました。
■参加した学生のコメント
医学科第1学年 白築美結さん
今回開催されたワークショップでは、今後の授業形態について一般教養の先生方と1年生の学生とでディスカッションをしたり、1?2年生で準備した今後の授業 形態に関する学生側の要望をプレゼンさせていただきました。ワークショップに参加するまでは、大学の授業を受ける一個人としての視点に偏ってしまっていました。しかし、オンライン授業を作成する先生方にも同様に苦労や困難がある事を改めて実感しました。また、これからの授業においてより主体的に授業に参加できるようになったと思います。慶應義塾大学の門川先生のお話でもあった通り、 コロナパンデミックにおけるオンライン授業や試験にはさまざまな形態があります。今後も、 学生にとっても教育者にとってもより良い教育形態を確立するために、今回のような意見交換の場を開催して頂けたら嬉しく思います。貴重な機会を頂きありがとうございました。
医学科第2学年 村岡暁さん
学生版アドバンストワークショップ、そして今回の医学教育アドバンストワークショップに参加し、コロナ禍と収束後の医学生の学び方について深く考える機会を頂きました。また、1年生を中心としてコロナ禍における学習の現状および要望を発表させて頂きましたが、直接お話する機会がない先生方にも学生の率直な意見をお受け取り頂けたのではと思います。このように学生が先生方と直接議論を交わせる場があることは本学の特色だと感じます。日々の学習だけでなく、学びの道を自ら考えて作っていくことも、本学の学生として重要なことであると気付かされました。Postコロナでの学びのあり方には正解の形がありませんが、1人の医学生としてこれからも自分達や後輩のより良い学びのために考え続けていきたいと思います。