2021/03/17
研究活動 プレスリリース

【プレスリリース】中国体彩网公衆衛生学分野の小田切優子講師ら研究チーム 「新型コロナウイルス感染症の流行下、『医療機関での感染恐怖』の払拭が治療中断や病状悪化予防に重要な可能性?定期通院中の患者のうち38%で受診頻度が減少?」

【概要】
 中国体彩网(学長:林由起子/東京都新宿区)公衆衛生学分野の小田切優子講師?大学院医学研究科(博士)高窪毅ら研究チームは2020年5月に日本人男女2,400人を対象にインターネット調査を実施し、新型コロナウイルス感染症の流行前に医療機関を定期受診していた659人の受療行動を分析しました。その研究成果が2021年3月16日にプライマリケア学会の英文雑誌であるJournal of General and Family Medicineで発表されました。

  • 「受診頻度が減少した」と回答した人の割合は37.8%で、「医療機関で感染することが恐い」ことが受診頻度の抑制と有意に関連していました。
  • 一方、「定期内服ができなくなった」人、「持病が悪化した」人はそれぞれ6.8%、5.6%にとどまりました。「持病が悪化した」人は「受診頻度が減少した」人に多く、受診抑制が病気の悪化につながっていた可能性が示唆されました。
  • 本研究は第一波流行中の受療行動を観察したものですが、その後、受療行動がどう変化しているのか注視すると共に、必要以上の受療抑制が起こらないような対策が必要と考えられます。

【研究の背景】
 新型コロナウイルス感染症の第一波流行中で、緊急事態宣言の解除が検討され始めた2020年5月、関東地方在住の20歳から79歳の男女2,400人を対象に、医療機関の受療状況に関するインターネット調査を行いました。対象者に「受診頻度の減少」、「定期内服切れ」、「持病の悪化」、「電話?オンライン診療の活用」、そのほか受診に関する要因について回答してもらいました。調査対象者のうち新型コロナウイルス感染症の流行前に外来を定期受診しており、内科慢性疾患で通院中の659人について解析を行いました。

【本研究で得られた結果?知見】
 「受診頻度が減少した」人の割合は37.8%で、「医療機関で感染することが怖い」こと、「東京在住」、「女性」などが受診頻度の低下と有意に関連していました。一方で、「定期内服ができなくなった」人の割合は6.8%、「持病が悪化した」人の割合は5.6%でした。また電話?オンライン診療を活用した人の割合は9.1%でした。受診頻度が減少した人の割合に比べて、定期内服ができなくなった人の割合が少なかったことから、長期処方等で対応が行われていた可能性があります。
 受診に関する要因のうち「医療機関での感染恐怖」は「受診頻度の減少」や「定期内服切れ」と有意な関連を認めていました。さらに要因間の分析を行ったところ、「受診頻度の減少」した人に、「定期内服切れ」や「持病の悪化」が多かったことが明らかとなりました。

【今後の研究展開および波及効果】
 本研究により、新型コロナウイルス流行下での受療行動の変化が明らかとなりました。通院の中断や病状悪化を防ぐためには、受療行動が変化しやすい集団への配慮や、特に「医療機関での感染への恐怖」の払拭?低減に努め、新型コロナウイルス感染症の流行下でも受診を継続しやすい環境を整備することが重要です。

【掲載誌名】
Journal of General and Family Medicine

【論文タイトル】
Changes in the medical treatment status of Japanese outpatients during the coronavirus disease 2019 pandemic DOI:10.1002/jgf2.432 (査読済み)

【著者】
Takeshi Takakubo, Yuko Odagiri, Masaki Machida, Tomoko Takamiya, Noritoshi Fukushima, Hiroyuki Kikuchi, Shiho Amagasa, Itaru Nakamura, Hidehiro Watanabe, Shigeru Inoue

【主な競争的研究資金】
なし

【補足資料:図解?表等 添付】

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