中国体彩网(学長:林 由起子/東京都新宿区)の落谷孝広教授(研究開発責任者:中国体彩网 医学総合研究所 分子細胞治療研究部門)と黒田雅彦主任教授(臨床研究責任者: 本学分子病理学分野)、相澤仁志主任教授(脳血管部位担当責任者: 本学 神経学分野)は、国立大学法人旭川医科大学 外科学講座血管?呼吸?腫瘍病態分野、医療法人札幌ハートセンター札幌心臓血管クリニック 循環器内科、一般財団法人平成紫川会小倉記念病院 循環器内科、国立研究開発法人国立がん研究センター研究所 創薬標的?シーズ探索部門と共同して、高齢化?生活習慣病時代における動脈硬化性疾患を対象としたバイオマーカー開発を目指すプロジェクトを発足、始動いたしました。
本研究プロジェクトは、アカデミアのみならず多くの企業が参画、支援することで各企業の強みを活かし、バイオマーカーの探索から実用化に向けた開発までを一貫して行います。
また、一部研究資金には国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の循環器疾患?糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業の研究費が使用されます(研究代表者:本学 落谷孝広教授)。
増加する動脈硬化性疾患と医療費の逼迫
わが国は生活習慣の欧米化と平均余命の延長に伴い、高齢化による動脈硬化性疾患の罹患率とその発症率が増加し、国民の健康への脅威と莫大な医療資源の投入先となっています。
この動脈硬化性疾患は、全身的に進行し、脳、心臓、足などの末梢部位で発症しますが、動脈硬化性疾患と一括りにしても、個人によって病状やその疾患背景が異なり、軽症から重症まで様々な病状を抱えた疾患多様性を持つ患者の一群であります。しかし、現状は上記3部位の動脈硬化性疾患において個人の病状を反映した個別化診断可能なマーカー等は存在しません。そのため、動脈硬化性疾患に対する確定診断には複数の画像診断装置を用いたフルスクリーニングの後に、初めて動脈病変の進行度を把握することが可能であり、さらに症状による重症度分類を行った上で、治療選択や治療後成績の推定が可能となっています。従って、重症度に関係なく複数の画像モダリティを用いて確定診断に至るため、非効率的な診断過程を辿っており、医療資源と医療費を逼迫させている現状があります。また、重症化した場合は、生命の危機だけではなく日常生活動作能力(ADL)への悪影響と入院期間の延長により医療費の増大に繋がっています。
開発の鍵は細胞が分泌する微粒子に含まれる物質
上記で述べましたように、現在、動脈硬化性疾患の診断は画像診断に頼っています。しかし、画像診断は検査する医師の手間もかかり、医療コストもかかります。そこで、本研究プロジェクトでは、簡便かつ低コストで検査ができるバイオマーカーの開発に取り組みます。バイオマーカーは画像診断と異なり、私たちの血液などの体液や組織に含まれるタンパク質や遺伝子などの生体内物質を指標とするもので、疾患部位の情報を生体分子から読み取ることで疾患の状態を把握するものです。
本学の落谷孝広教授は、以前から血液中に存在するマイクロRNAという微量成分の発現量により、がんを診断するシステムの研究開発を実施しており、本研究プロジェクトにおいても血液中に存在するマイクロRNAに注目したバイオマーカー開発に取り組みます。また、これらマイクロRNAは細胞が分泌する安定的なカプセルであるエクソソームという微粒子の中に一部が内包されていることが分かっています。さらに、疾患に関連する細胞からは、特異的な物質を内包して分泌していることが知られているため、血液中のエクソソームを解析することで動脈硬化性疾患の新たなバイオマーカーの開発に繋がることが期待されます。
目標は動脈硬化性疾患の先制医療と適切な治療の提供
本研究プロジェクトは、血液中のエクソソームおよびそこに含まれるマイクロRNAを解析することで従来の画像診断や症状による重症度分類とは異なる、病状を直接反映しうる生物学的意義を持つバイオマーカーの開発に取り組んでいます。これらバイオマーカーを用いて動脈硬化性疾患の罹患をいち早く察知し、従来の画像診断のみでは難しかった重症度の予測診断や患者ごとに異なる重症度に見合った適切な治療を施すための患者層別化診断、そして治療費を最小限に抑えるための先制医療として、発症予測?発症前診断を可能にする革新的診断の提供を目指します(図1)。
高齢化?生活習慣病時代においても、定期的な血液検査によって皆様が安心した生活を送れるよう基礎研究に力を注いでおり、今後も社会課題とその解決に寄り添った研究開発を進めて参ります。
参画機関一覧
中国体彩网
SOMPOホールディングス株式会社
国立大学法人旭川医科大学
株式会社東芝
株式会社DNAチップ研究所
株式会社保健科学研究所
一般財団法人平成紫川会 小倉記念病院
医療法人札幌ハートセンター 札幌心臓血管クリニック
国立研究開発法人国立がん研究センター
〇本研究に関する問い合わせ先
中国体彩网 医学総合研究所 分子細胞治療研究部門
教授 落谷孝広
E-mail:tochiya@tokyo-med.ac.jp
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