いつ来るかもしれない災害に備えて、新宿区、新宿区医師会、新宿区内災害拠点病院がタッグを組んで「新宿区災害医療研修会」を定期的に開催しています。平成30年12月8日(土)に行われた研修会のプログラムは、医療救護所における情報伝達、1次トリアージ(START法)、2次トリアージ(PAT)の講義とワークショップ(実技)、応急処置でした。ここに医学部医学科4年生の林 萌菜美さん、? 剛一さん、3年生の地曵 瑶平さん、植野 大空斗さんが開催側ボランティアとして参加しました。
◆救急?災害医学分野 織田 順 主任教授のコメント
本研修会は多職種を対象に実技を通して実践力をつけること、ディスカッションして疑問を解消することを重視しています。4名の学生は研修会の会場準備、打ち合わせから積極的に参加しました。学生たちは、はじめは分からない用語が多く少し緊張していましたが、傷病者役としての打ち合わせの時間になると、他学の救急専門医の先生方やDMAT スタッフ、医師会の先生方にどんどん質問して見事に役割を果たしていました。災害拠点病院のスタッフ、医師会の先生方、新宿区職員のどなたともコミュニケーションをとるのが上手で、立派に顔の見える関係を築いていました。ターニケット(止血帯)や気道確保、骨盤骨折疑いの傷病者に対する簡易シーツラッピング法もお手のものとなり、上達の早さに感心し、またうれしく思いました。年2回程度定期的に開催されますので、次回以降もぜひ多くの学生さんに参加してもらえればと思います。
左:トリアージの様子 / 右:参加学生と織田主任教授
◆参加学生からのコメント
医学科第4学年 林 萌菜美
軽い気持ちで参加した今回のボランティアですが、参加してよかったと思います。
ボランティアの内容は、新宿区が主催する「災害医療研修会」にて講義後、実技:トリアージの模擬患者役でした。ボランティアを募る前まで模擬患者役も一般の参加者の方だったため、シナリオを読む時間が必要になるなど、参加者のできるトリアージの回数が少なかったそうです。私たち学生がボランティアとして参加することで、参加者の方の実践の機会を少しでも増やすことができたのではないかと思います。
参加して気づいたことは「練習」の難しさです。最初にシナリオを渡されたとき、私たちはバイタルサインなど、数値を暗記しました。その際、アドバイザーの先生から正常値の場合、参加者の方に実際に測ってもらう方が良い、と言われたことが印象的でした。トリアージの練習は判断の基準を確認し、どちらかというとクイズ形式になりがちだと思います。しかし、今回は実践に沿うような形で、できるだけ呼吸数?脈拍を実際に測定してもらいました。呼吸数?脈拍の測定は慣れれば簡単だと思いますが、「実際に測ってみてください」と言われると、ためらわれる参加者の方も多いように感じました。頭で理解していても実際に行動することは難しいです。普段の「練習」から実際の行動を促すことがいかに重要かを感じました。
多くの人が災害医療の知識を持っていた方が、より良い救護活動環境を作ることができます。そして、より多くの人に参加してもらえるような研修の提供にはボランティア(模擬傷病者)という存在が欠かせないと考えます。
一見、学生が参加することはあまり役に立たないと思うかもしれません。ですが、参加することに意義があり、参加することで私たち学生もトリアージを広める活動に貢献することができると思います。もし今回参加を迷った学生がいたら、次回のボランティアにはぜひ、勇気を出して参加してほしいと思います。
医学科第4学年 ? 剛一
今回患者役として参加し、被災者の立場から様々なことを学ばせていただきました。トリアージタッグのSTART法の判定基準が、実際の現場ではいかに運用されているのかを体験することができました。また救急医学の講義で学習したシーツラッピング法などの手技についても教えていただき、実際に学生同士で体験させていただきました。
災害現場において、いかにして被災者を緊急度に応じて迅速に振り分けるのか、医療資源が少ない中、いかに工夫して応急処置をするのかを臨場感を抱きながら学ぶことができました。1月から病院実習が始まりますが、今回得た経験を活かし、患者やその家族といった多様な視点を持って実習に望んでいきます。